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(L版)水郷潮来観光と6月


分類: (L版)〔00/06〕水郷潮来あやめの旅 地域: 潮来市
(登録日: 2000/07/04 更新日: 2009/01/10)

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水郷観光


潮来と十六島(主に香取市(旧佐原市)の利根川以北)の辺りを「水郷」と呼んでいます。水郷の定義はあいまいなもので、霞ヶ浦*流域、利根川流域などさらに広い地域を水郷と捉えることもできます。霞ヶ浦*と利根川の流域に陸地が現れ、あるいは流域が干拓されて形成された水郷地帯は、情緒豊かな景観・文化を生み出し、現在に至るこの地域の水郷観光資源ともなってきました。あやめ(主にハナショウブ)の花が咲く6月には数多くの観光客が水郷を訪れます。潮来にはホテル・旅館が建ち並び、多くの人が潮来を起点として水郷を観光します。潮来市では、6月中、「水郷潮来あやめ祭り」を開催し、この季節には数十万人の観光客が水郷を訪れると言います。この企画「水郷潮来あやめの旅」は、私が水郷観光の一観光客となり、その風物をWeb上に採録してみようというものです。
 

あやめと十二橋めぐり



水郷観光の目玉は何と行っても6月盛りを迎えるあやめ(主にハナショウブ)の花、そして十二橋めぐりでしょう。潮来市には前川の河岸に造成された前川あやめ園の他、浅間下あやめ園、常陸利根川あやめ園(2カ所に分散)があり、あやめは合わせて100万株にも及ぶと言います。また香取市(旧佐原市)の与田浦の湿地に造成された水生植物園には150万株のあやめがあるということです。これらの園地のアヤメの数を合わせると250万株にもなります。全国各地にあやめの名所はありますが、アヤメと言えば水郷潮来と誰もが連想するぐらいに知名度が高いのは、アヤメを観光資源として園地の造成に努めてきたこの地域の面目躍如といったところでしょうか。豊かに咲き乱れるあやめの花を観賞できるのが水郷観光の醍醐味の一つです。

十二橋は十六島の一村であった加藤洲に形成された独得なものです。舟で十二橋の水路(新左衛門川)の舟行を体験し、水郷情緒を楽しむのが、水郷観光の魅力となっています。潮来市では、娘船頭さんが昔ながらの櫓舟を櫓こぎで遊覧する「前川十二橋めぐり」を新たな観光のウリにしています。
 

水郷情緒は現代に生きているか


これを検証してみることも、この企画の狙いの一つです。交通手段が舟から陸上交通(車・鉄道)へと変わり、水郷の状況も昔とは全く様変わりしました。加えて常陸川水門が出来た後の水郷は、水資源が管理されるところとなり、水辺は護岸堤で固められ、真菰や葦が生い茂っていた水辺は失われてしまいました。水位も調整されているため、流域の水田や湿地が水に浸かったりすることもなくなりました。

さらに言えば、水郷情緒に人々が魅力を感じるかどうかといった人の意識の変化も水郷情緒を考えてみる上では大切な要素の一つです。かつて潮来を題材に数多くの歌が作られ流行しました。近世には潮来節と呼ばれるジャンルの歌が全国津々浦々まで流行し、潮来の水郷情緒が親しまれてきました。20世紀、音楽がレコードによる伝播形態に変わった後も『船頭小唄』『潮来花嫁さん』『潮来笠』などのヒット曲が生み出されています。こうした歌に表現された水郷の情緒は、ある時代までの、あるいはある世代以上の文化的なものなのでしょうか。水郷の観光客層は中高年層が多いようです。現在、演歌が廃れてしまったように、嗜好性の強い文化は、世代交替と共にうつろいうるものかもしれません。

この日はお子さんを連れた家族の方の姿も多く見かけました。私が子供の頃に見た霞ヶ浦の記憶がなければ、おそらく『マッピング霞ヶ浦*』が形になることはなかったかもしれません。このお子さんたちもやがて大人になり、あるいは家庭を持った時に再び故郷を訪れてその魅力を感じるという展開もあるものと思います。また地域を愛する取り組みや自然環境保全の取り組みなどが行われていることもこれまでの時代とは違う、地域への回帰の時代が訪れるのではないかという期待を抱かせるものです。水郷の風物の中には観光資源として開発されたものもありますが、同時にこの地域の個性として現在に継承された地域文化が残っています。水辺が護岸堤に囲まれてもなお、水郷の情緒が豊かに感じられるのは不思議な感じがします。あと10年、20年と経ったときにどのように変化しているのか、末長く見守っていくことにしましょう。
 

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