『マッピング霞ヶ浦*』では、美しい風景を紹介することを目的とはしていません。構図が悪かろうが、車の内部が写っていようが、ビデオから抽出した多数の画像をクリッピングしています。ビデオ映像に絡めとられた数々の対象を数多く積み重ねていくことで「地域の発見」が促され、発見と探究の絶えざる繰り返しが「知識形成」を促すと考えているからです。私は未だ霞ヶ浦のしぐれの風景を紹介したことがありませんでした。しぐれた時に霞ヶ浦はどのような表情を見せるのか。1998年8月のある日、ポツポツと雨が降り始めたかと思うと、急にどしゃ降りになり、霞ヶ浦のしぐれの風景を見てみたいという好奇心から捉えた映像をここに紹介します。「しぐれ」という言葉、またその現象そのものに私たち日本人は何がしかの思いや感情を喚起されます。霞ヶ浦のしぐれが人に喚起する思い…、これが映像の積み重ねから喚起されたら、この企画は半ば成功です。ただ、しぐれの風景は「価値ある映像」と考えられていないのか、このような映像は大変めずらしい部類に属することを申し添えておきましょう。
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