霞ヶ浦にジュンサイは自生しているのでしょうか。おそらく現在では皆無なのではないでしょうか。ところでジュンサイと言えば、私が現在暮らしている山形県はジュンサイの産地で、食用に供されるジュンサイは、山形の特産物になっています。ジュンサイの新芽はぬるぬるとした透明の膜で覆われ、美味で独特な食感があります。山形県内の多くの沼や池にジュンサイが育ち、ジュンサイの新芽を摘む風景を目にすることもあります。このようにジュンサイに恵まれ、ジュンサイを日常的に食することができるのは、霞ヶ浦から遠く離れた山形に暮らしていればこその恩恵かもしれません。確かに生まれ育った霞ヶ浦の地でジュンサイを食した記憶がありません。 常陸風土記の丘のジュンサイのバケツには、「茨城では、保護地区で僅かながらみられる」と解説されています。保立俊一さんの『水郷つちうら回想』には、次のような回想が記されています。 「昭和二十年代までは霞ヶ浦をはじめ土浦周辺の沼や湖で、じゅんさいが採れ、料理店では珍味として用いられていた。(略)五月末頃、じゅんさいの新芽が出ると土浦周辺の沼ではじゅんさい舟が出てじゅんさいの新芽を採集したものである。」 (保立俊一著『水郷つちうら回想』、筑波書林、1994年、p.156)
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