霞ヶ浦との関わりで言うと、作曲家・古関裕而については一言、触れないわけにはいきません。というのも、予科練(土浦航空隊)を歌った『若鷲の歌』の作曲者に他ならないからです。霞ヶ浦で訓練した数多くの航空兵が戦場に散っていきました。「予科練いいとこ」をPRした戦時中のプロパガンダ映画『決戦の大空へ』(1943年)は、今となっては劇映画という性格を超え、当時の予科練の様子を今日に伝える貴重な記録映像です。もう一つ忘れがたいのはその主題歌の存在。悲壮感溢れる主題歌の『若鷲の歌』は、戦時の体験世代にとっては当時の記憶と共にあることでしょう。この曲によって、予科練に志願し戦場へ散っていった人も多かったのかもしれません。この日のコンサートは、国民歌謡〜ラジオ歌謡、というカテゴリーの選曲のためプログラムには挙がりませんでしたが、古関裕而といえば『若鷲の歌』というぐらいに古関の代表曲です。藍川由美によると、古関裕而の戦時歌謡は、いわゆる軍歌ではなく、大衆の心を代弁し癒した大衆音楽、「民族音楽」であると言います。これはまた大胆な価値観の転換の提案です。歴史的に既にプロパガンダとして大きな役割を果たしてしまった歌を真っ新にして聞き直すことは普通の人には難しいかもしれません。
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