歩崎観音の境内に、映画『米』の撮影記念碑が建っています。幼い頃から、歩崎観音には何度も来たことがあるので、この苔むした碑にはどのような謂れがあるのだろうと思っていました。碑の表の下には、次のように書かれています。「青い湖のほとり、ここに芽生えた米の一生と愛をめぐる人々の哀歓…」 碑に刻んだ文など興味がなければ読むことなどありませんね。この文からは、田園ロマン劇を連想させなくもありませんが、半農半漁の貧しい暮らしを描いた社会派ドラマでした。俳優が語るこの地の方言には、地元の者としては違和感を感じましたが、この映画は「…だっぺえ」という言葉の美しさを今に伝えてくれている点、貴重な文化資産となりました。また、この映画には、かすみがうら市(旧霞ヶ浦町)各地の風習や風物が登場します。これもかけがえのない記録です。映画の冒頭で描かれる牛渡のへいさんぼうの祭りの様子は貴重です。映画に捉えられた歩崎観音周辺の美しさも筆舌に尽くしがたいものがあります。確かに、子供の頃までは、映画に捉えられた美しい情緒が残っていました。今では、すっかりその面影がなくなってしまいましたが…。
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