石岡市若松にある若松町交差点は、Y字に道が分岐する三叉路、即ち追分が現在にそのまま残ったところです。この周辺は市街化され、1977年の住居表示法施行により若松◯丁目となりましたが、本来の若松町はここよりもっと以南の旧市街(現在の石岡市若松◯丁目と若宮◯丁目の境界付近)を指していました。若松町バス停もこの交差点にあるので、ここが若松町の中心と思っている方も多いのではないでしょうか。『石岡の地名』(石岡市文化財関係資料編さん会編、石岡市教育委員会、1996年)掲載の「明治17年迅速地図」(同書、pp.128-129)を見ると、この辺りは畑が広がるだけの場所だったことがわかります。追分の左へ進むと柿岡、右へ進むと石岡町(大字石岡)字矢向(現在の矢向町)になります。ちょうどこのY字の分岐先の間に府中松平藩の武家屋敷がありました。このことからは、旧市街と武家屋敷の二極に分散した近世の府中の町を結ぶ幹線道路だったと見ることができます。現存する道標は大変印象的です。
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