霞ヶ浦*(霞ヶ浦、北浦、外浪逆浦、常陸利根川などの流域)を取り巻く広大な台地の存在が霞ヶ浦*の成立に関与していることは、『マッピング霞ヶ浦*』で探求したいと思っているテーマの一つです。では、霞ヶ浦*に注ぎ込む豊かな水の源はどこにあるのでしょうか。霞ヶ浦*にはいくつもの河川が流れ込んでいますが、台地に滲み込んだ降水が低地の上に湧いて川となり湖となって海に注ぐ。これが水の循環の簡単な図式です。ところで、『マッピング霞ヶ浦*』では、陸から、湖上から、さらには空から霞ヶ浦*を捉えてきました。そこで改めて認識されてきたことは、台地の存在の割合の多さです。この広大な台地に滲み込んだ降水が谷津(台地の谷間)に湧き出し、この土地に独特な里山文化を形成してきたと言われています。人々は台地に暮らし、湖岸の低地に加え、里山の谷津を田圃として耕作してきました。里山の湧き水がその土地の農業を支え、同時に霞ヶ浦*の湖の水源となって、人と自然の共生を育んできました。里山はまた薪となる木材の採取場ともなっていました。これが里山の文化です。 「昔むかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。」と昔話で語られる物語がまさに里山の世界です。現代の生活では、芝刈りはしなくなったかもしれませんが、水の大切さと農業は今も昔も変わることはありません。川から桃が流れてきたり、竹からかわいい娘が現れたり、といった具合に、里山は日本古来の物語を育んでもきたわけです。
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