「この世の見え方は常に相対的である。」これをここでは相対性原理と定義しましょう。相対的なものには空間的な相対性ばかりでなく、時間軸上の相対性、意味空間上の相対性といった、さらに奥深い相対性もあります。『マッピング霞ヶ浦*』におけるマッピングの真の狙いもこうした多軸的な相対性の理解促進にあります。霞ヶ浦*空間は、この世の相対性を実地見聞する上でも実に楽しい可能性を秘めた実空間です。この地点からは◯◯がこのように見えるのではないかという仮説を立て、実地検証をすることができます。実は1999年の元日、霞ヶ浦の遊覧船からささやかな検証を試みてみました(→「〔99/01〕元日の霞ヶ浦遊覧」)。土浦入の最奥部の土浦港、桜川河口付近からは沖宿の岬、美浦村牛込の岬が重なり合って三又沖を見通すことはできないはずですが、少し沖へ出ると、岬が両側に開いて常陸利根川方向を見通すことができるようになります。さらに加茂〜牛渡沖まで進めば、美浦村の馬掛の段丘の先に浮島から常陸利根川へと続く対岸線が現れてくるはずです。数値地図を用いて3Dの地形図を描いてみることにより、このシミュレーションをすることもできます。しかし、周囲に殆ど山地がない霞ヶ浦*周辺の3D図は余りに単調で実地見聞による検証を行わないと、どうにも実感が湧いてきません。3Dシミュレーションでは補えないところにも霞ヶ浦*の相対性の楽しみがあるわけです。
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