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泳げる霞ヶ浦

ゼニタナゴシンポジウム

カテゴリ: ゼニタナゴシンポジウム 地域: 土浦
(2004/11/06 更新日: 2018/08/27)


2004年10月24日(日)PM1:00〜5:00 於:土浦亀城プラザ
主催:(社)霞ヶ浦市民協会
(このシンポジウムは(独)環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けました。)

趣意書
神奈川県以東を自然生息地とするゼニタナゴ(Acheilognathus typus)は、近年の水質汚濁や護岸整備などによる環境悪化に加え、釣マニアによる無秩序な外来魚放流により近年著しく減少し、絶滅危惧IB類に指定されています。昨年宮城県において開催された東北地方全体を視野に入れた初めてのゼニタナゴに関する「ゼニタナゴシンポジウム」でも、従来の生息地が、ブラックバスなどの外来魚により、生息数が激減していることが報告されました。一方、関東地方の生息地では、東北に比べてさらに減少が著しく、神奈川県などのように生息地が消滅し、継代飼育のみで地域個体群が残っている地域もあります。
 霞ヶ浦ではかつて漁師に苦い魚と嫌われるほど多数生息していました。しかし当協会で1998年に生息を確認して以降、自然個体が確認されておらず、地域個体群の絶滅が心配されています。
 霞ヶ浦のような開発の著しい地域においては生息地の環境破壊と消滅が著しいため、地域個体群の存続を目指した継代飼育を検討しなければなりません。そのため専門家を招き関東地方における生息地保全の現状と継代飼育の可能性について討論してもらいます。
 
(13件)
01 司会の市民協会滝下さん 02 市民協会堀越理事長 03 東京大学総合研究博物館の新井良一先生 04 千葉県立中央博物館副館長の望月賢二さん
05 神奈川県水産総合研究所 06 地球・人間環境フォーラムの萩原富司さん 07 ゼニタナゴ研究会の北島淳也さん 08 自然環境研究センター上席研究員の小林光さん
09 栃木県水産試験場の久保田仁志さん 10 滋賀県立琵琶湖博物館主任学芸員の中井克樹さん 11 ゼニタナゴシンポジウム 12 ゼニタナゴシンポジウム
13 ゼニタナゴ

講演要旨


1、新井良一(東京大学総合研究博物館)
タナゴ亜科の系統とゼニタナゴの重要性
学術的見地からゼニタナゴの特異性を解説。
タナゴの進化を遺伝子、背鰭、鱗の大きさ、数、脊椎骨といった所から分類。ゼニタナゴは日本固有種で極めて特異な種類。

2、望月賢二(千葉県立中央博物館副館長)
千葉県におけるミヤコタナゴ保全に対する取り組みとゼニタナゴ保全への適用。
ゼニタナゴの現状は、急激に減少。
直接の原因は、農業の近代化とそれに伴う里山水循環系の人工化、化学薬品の多用、都市化・開発による生息地消失、水質悪化。
保全の方向性は、地域の財産として地域の人々の手で維持管理できる仕組みの構築。自然が地域の収入源となり一定の割合の人が生活を維持できること。

3、勝呂尚之(神奈川県水産総合研究所内水面試験場)
神奈川県におけるゼニタナゴ生息の現状と保護対策
現状、平成5年横浜のため池で生息が確認。その後タイリクバラタナゴが大量に繁殖、さらにブルーギルが移入し、ゼニタナゴは全く採集されていない。
増殖研究を実施。ドブガイなどに産卵。ビオトープで飼育。放流には水質、外来魚、護岸工事などクリアーすべき課題あり。
ゼニタナゴの知名度を上げ地域の里山、湖沼、自然生態系を守る意識を行政、一般市民に強くアピールする必要がある。

4、萩原富司(地球・人間環境フォーラム)
霞ヶ浦におけるゼニタナゴの生息の現状
1997年7月出島の小河川で確認(7匹)
2001年8月麻生町で確認。以来生息情報なし。

5、北島淳也(ゼニタナゴ研究会)
東北地方でのゼニタナゴの現状と「ゼニタナゴシンポジウム」
ゼニタナゴにとっての「三つの危機」〜ほ場整備、ため池や水路の管理方法の変化、外来生物。
東北での「ゼニタナゴシンポジウム」の開催(2003年12月伊豆沼)全国から約200名が参加。

6、小林光(自然環境研究センター)
希少淡水魚保護における行政と市民と研究者の連携
汽水・淡水魚類に絶滅種が多いのは、
普段目に触れにくいため、人々の関心が薄い。
希少種は観賞用に密漁が行われ研究者も公表を躊躇する。自然保護行政は淡水魚に目を向けていない。
水産庁への遠慮。
解決の方法としては、生息地ごとに「守る会」を結成。市民の関心を高める。全国的な淡水魚保護連盟を立ち上げる。環境省に希少淡水魚類の全国実態調査を求める。地方自治体には密漁監視体制整備、生息環境の管理、生息地買い上げ制度、環境教育の実施。

7、久保田仁志(栃木県水産試験場)
ミヤコタナゴの継代飼育と遺伝的多様性の維持
人為的に飼育繁殖を続けた生物では、遺伝的多様性を喪失、最悪の場合野外での生存能力や繁殖能力を失うことも危惧される。
遺伝的多様性の維持には、親魚の数と繁殖期間を長くすることが有効。

8、中井克樹(滋賀県立琵琶湖博物館)
養殖個体を自然水域に戻すことは許されるか?
(遺伝的問題点と放流先の環境に注目して)
琵琶湖博物館で系統保存のために飼育しているゼニタナゴは、1980年代に霞ヶ浦水系で採取された個体。
野生の地域個体群の存続の危機。
水質、産卵母貝の生息状況、外来魚種(オオクチバス、チャネルキャットフィッシュ、オオタナゴ)
存続基盤の整備のない状況では無駄な努力。
放流は「許されるか?」
近親個体同士のひ弱な個体を放流して、取り返しのつかないことになりはしないか?
放流は、慎重に最後の手段とすべき。
 

写真をクリックするとビデオが見れます。

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