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泳げる霞ヶ浦

第3回全国タナゴサミットin霞ヶ浦

カテゴリ: ゼニタナゴシンポジウム 地域: 土浦
(2007/12/18 更新日: 2018/08/27)

基調講演


小林 光(NPO法人 日本国際湿地保全連合)
在来淡水魚については、「無関心」が一番の問題。
生物多様性の国家戦略を見ても現状認識、目指すべき方向性は間違っていない。が、具体的な施策になると先細り、「やってられない」というのが役所の本音。
市民が声を上げて行政を動かそう。
 
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ゼニタナゴ保全の現状


藤本泰文・進東健太郎(宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団)北島淳也(岐阜大学院)
ゼニタナゴは、ドブガイなどの二枚貝に秋卵を産み付け、翌年春まで貝の中で過ごし暖かくなって外に出る。稚魚は約4ヶ月で成魚になり産卵後、死んでしまう。

かつては関東から東北にかけて広い範囲で分布していたが、今は小さなため池や水路にしか生息していない。河川改修や圃場整備、水質悪化に伴う二枚貝の減少、オオクチバスなど外来生物による捕食、マニアや観賞魚販売業者による乱獲が原因と考えられる。

ため池の池干しによる外来魚の駆除や二枚貝の生息環境の整備には地域住民との協力関係が欠かせません。

環境保全型農業、ため池の池干しなど伝統的管理を支援する制度が求められています。
 
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福島県のタナゴたち


倉石 信(ふくしま海洋科学館)・稲葉 修(南相馬市博物館)
福島県は、浜通りと中通り地方の河川は太平洋側に流れ会津地方の河川は日本海側に流れます。

太平洋側の河川にはゼニタナゴ、タナゴが生息し、日本海側の河川にはキタノアカヒレタビラ、ヤリタナゴと分かれているのが福島県の特徴です。外来種としてタイリクバラタナゴが全体にカネヒラが近年確認されています。

福島県版レッドデータブックでは、4種の在来タナゴが選定され、その中でもゼニタナゴは絶滅危惧I種になっています。福島県希少野生動植物の保護に関する条例により、ゼニタナゴは特定希少野生動植物に選定され、許可なく採捕できなくなりました。

ゼニタナゴは、ため池に1箇所、河川が3水系に生息しています。1水系ではゼニタナゴの稚魚とブラックバスの稚魚が同時に観察されて、許可を取っていなかったため網を入れることができず苦々しい思いをしました。

「アクアマリンふくしま」ではビオトープにゼニタナゴを放し、来場者の方に触れてもらう取り組みをしています。(足元をすり抜けてほとんど捕まりませんが)

福島県下では、保全活動ということは特に見られません。子供たちが自由にゼニタナゴや魚たちと遊べる環境を願っています。会場に来場されている方からの助言・知見をお願いします。
 
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群馬・藤岡のヤリタナゴの保全活動


斉藤裕也・佐藤嘉治(ヤリタナゴ調査会)
群馬県のヤリタナゴは藤岡市の一部の河川に生息している。ヤリタナゴ調査会は、1999年11月に15年ぶりにヤリタナゴが発見されたことで活動を始めた任意団体である。
市の環境基本計画にヤリタナゴの保護が謳われ、市の環境課と繋がりができ圃場整備計画の早い時期での確認ができた。
2002年7月には、ホトケドジョウ、マツカサガイとともに天然記念物に指定された。

活動内容は、春の掘りさらい(3月)ヤリタナゴ観察会(5月)捕食者駆除(6月)小学校自然観察クラブ(10月)秋の流下稚魚回収(11月)草刈補助(8〜9月)がある。
平成18年に環境省から地域環境功労賞を受賞したのが励みになった。

日頃の水路管理や監視は地元が行い、年間を通した行事の開催、行政との折衝を「調査会」が行っている。地元の「ヤリタナゴを守る会」との連携が欠かせない。
 
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東海地方におけるタナゴ類の現状と保全


北島淳也(東海タナゴ研究会・岐阜大学)
東海地方(木曾川水系)には7種類のタナゴ(イタセンバラ、シロヒレタビラ、カネヒラ、イチモンジタナゴ、アブラボテ、ヤリタナゴ、バラタナゴ)が生息している。

私たちの活動内容は、分布状況の把握、個体群の由来を明らかにして、生息地のモニタリングと生態学的知見の蓄積、保全計画の策定、危険分散のための飼育、増殖、放流、生息地復元、「おらが村のタナゴ」を町づくり村づくりに活かす提案を行っている。

「東海タナゴ研究会」は地元の方にとっては「よそ者」であるが、タナゴの保全を通して農村文化、里山文化の新しい形での継承活動と考え行動している。

アブラボテというタナゴのなわばりオスとなわばりメスの生態についても言及。
 
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ニッポンバラタナゴを保存してきた伝統的な


加納義彦(NPO法人ニッポンバラタナゴ高安研究会)
大阪府八尾市の高安山山麓には大小400あまりの溜池が点在している。そこがキンタイ(ニッポンバラタナゴ)の生息地である。

農閑期、ドビ流しという池干しが行われヘドロを田畑に栄養分として流し、子供にとっては泥んこ遊びの魚とり、主婦にとっては食材採りが行われていた。

ニッポンバラタナゴは、ドブ貝に産卵する。ドブ貝はハゼ科のヨシノボリに寄生して繁殖する。
池干しによって溜池の富栄養化が抑えられ、土壌改良が進み、ドブ貝のエサとなる珪藻類が大量に発生することが分かった。
 
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岡山県及び近隣地域におけるスイゲンゼニタナゴの状況


青 雅一(NPO法人岡山淡水魚研究会 理事長)
岡山方言でカメンタ(タナゴ類の総称)は急速に姿を消しつつある。特にスイゲンゼニタナゴは、アユモドキが天然記念物になったのに対し指定を外れたことから密漁者による乱獲が行われた。

また用水路の改修工事についても業者によってきめ細かく行うところと全く配慮しない業者がいる。

岡山市長にスイゲンゼニタナゴの保護の要望書を提出、用水路の工事を中断させ、環境保全課が土地改良区、農家との間に立って調整をしてくれた。

当会では環境省から「密漁及び生活環境監視パトロール業務」を委託され実施している。
 
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九州北部におけるタナゴ類の分布状況


中島 淳(九州大学大学院農学研究院&ふくおか都市圏の生きものを考える会)
九州北部におけるタナゴの分布状況は在来6種(アブラボテ、ヤリタナゴ、ニッポンバラタナゴ、カゼトゲタナゴ、カネヒラ、セボシタビラ)移入種2種(タイリクバラタナゴ、イチモンジタナゴ)の合計8種が確認されている。

福岡市周辺のタナゴの分布状況を1983年と2005年で比較した。都市化の進んだ河川では激減している。

「ふくおか都市圏の生きものを考える会」を結成し、地元住民を対象とした観察会や小中学校への出前授業等行っている。
 
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タビラ類の分類について


新井 良一(東京大学総合研究博物館)
タナゴ亜科はコイ科の中で繁殖生態的には特殊であるが、形態的には最も多様である。

分類の方法として背びれの数や鱗の数、染色体数、他の動物への産卵の有無、卵の形、産卵管の有無、頭の感覚器官、婚姻色の明瞭・不明瞭で分類した。

中国・ベトナムのタナゴ亜科について分類を発展させるため婚姻色を撮影する機会がありましたら撮影者名、場所、日時、生息環境、出来れば被写体そのものの特徴を添えて博物館までお送りいただければ幸いです。
 
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中国江南地方の循環型農漁業とタナゴ類の関係


石鍋 壽寛(社団法人観音崎自然博物館副館長)
平成7年に中国江南地方にタナゴの調査に行った。
前年の調査では少しのタナゴしか採取できず、1種1ビールで声を掛けたら9種類のタナゴが取れた。

田圃は稲だけでなく様々に利用されている。ソウギョやハクレン、ドジョウ、淡水二枚貝の養殖、水路ではフナやタウナギ、エビ、ナマズ類の漁、アヒル、ガチョウの群れ、田圃の畦には大豆やチンゲン菜を植え人家では鶏や豚、羊などの家禽がいた。

こうした田園風景は清朝時代からの伝統で土地所有者と耕作権が切り離され、土地をできるだけ酷使する商業的な農漁業である。日本の里山が自給自足的な農業であるのと対極をなす。

日本の循環型農業が、維持管理に過酷であったが自然に生息する魚類にとっては大変優れたシステムであった。このシステムが高度経済成長以降急激に衰弱し、維持できなくなり過渡的な農漁業が各地で行われている。中国に循環型多目的農漁業の経営に地域振興、維持管理の担い手のアイデアが隠されている
 
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霞ヶ浦におけるタナゴ類の生息状況


熊谷 正裕(霞ヶ浦市民協会)
関東地方では、「江戸前の釣り」の一つとして大名や大店のご隠居の趣味としてタナゴ釣りが行われていた。あくまで遊びの世界で「美」や「粋」「小ささ」の極致を追求する江戸の文化であった。

霞ヶ浦でのタナゴ釣りは戦後東京周辺のタナゴが激減するのと同時に、釣り人がこぞって訪れるようになった。

霞ヶ浦には在来4種(ヤリタナゴ、タナゴ、アカヒレタビラ、ゼニタナゴ)と外来2種(タイリクバラタナゴ、オオタナゴ)合計7種が生息している。

かつて佃煮にするほど居たゼニタナゴは2001年以降、採取の記録がない。

霞ヶ浦のタナゴ達は、水質の悪化や霞ヶ浦総合開発による湖岸のコンクリート護岸化、オオクチバス・ブルーギル・アメリカナマズ等の魚食性外来魚の移入といった環境の激変にも耐えて、健気に生き残っている。
 
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霞ヶ浦におけるタナゴ類の生息環境


諸澤 崇裕(筑波大学生命環境科学研究科)
タナゴ類の生息環境について定量的に研究した例は少なくはっきりわかっていないことが多い。

霞ヶ浦周辺126地点の魚類の採取と水深、流速、岸辺の形状、底質、電気伝導度、水温を2005年の4〜5月に1回、8月〜10月に2回測定した。

アカヒレタビラは流水を好むと言われていたが、霞ヶ浦では止水域を好むことが測定結果から分かった。

タイリクバラタナゴは3面コンクリート護岸でも電気伝導度にも強いことから、霞ヶ浦の環境に適合した種と言える。
 
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日本に侵入したオオタナゴとその影響


萩原 富司(財団法人地球・人間環境フォーラム)
2001年に在来タナゴに比べると非常に大きく背鰭が前後に長いタナゴが霞ヶ浦で確認された。

この大型の侵入タナゴの分類学的観察結果と個体数の時系列の変化から他の先住タナゴへの影響について報告します。

調査方法は、漁師の張り網と釣りにより捕獲した試料をフォルマリンで固定しX線で撮影しました。
個体数の計測は、二枚貝から浮遊したタナゴの稚魚を種が分かるまで飼育して個体数を計測しました。

この結果、侵入タナゴはAcheilognathus macropterusと分かりました。二枚貝(イシガイ)からのタナゴは35の稚魚が出て10個がオオタナゴであった。

今後、霞ヶ浦からのイシガイの持ち出しによる拡散が懸念される。
 
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さくら上池におけるゼニタナゴの野外飼育状況


秋山昌範(社団法人霞ヶ浦市民協会理事)
さくら上池は霞ヶ浦流入河川のひとつである小野川流域の牛久市さくら台に設けたビオトープである。

琵琶湖博物館から霞ヶ浦産のゼニタナゴを譲りうけ野外飼育環境での実験が始まった。

池は、オーバーフローで小野川水系に流れ出すことはあるが生物が侵入することはほぼありえない。
ゼニタナゴにとっての天敵はカワセミとヌマチチブである。

カワセミは、メダカとモツゴ、ヨシノボリが狩猟対象になっておりゼニタナゴは下層を移動することが多く難を逃れている。ヌマチチブは二枚貝繁殖用に入れたヨシノボリの稚魚に混じって入った。

現在ゼニタナゴは8匹生存が確認されている。体長は33〜40ミリ、放流時に比べて一回り大きくなった。
10月オスの婚姻色が目立ち、メスが1匹確認されている。産卵管が伸び1回の産卵が行われた。
願わくば、この秋産み付けられた卵が無事越冬して来年春に浮遊することを切望する。
 
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ポスター発表

横浜市のため池におけるミヤコタナゴの復元
勝呂尚之(神奈川県水産技術センター内水面試験場)

絶滅危惧種ミヤコタナゴにおけるMHC遺伝子多様性
久保田仁志(栃木県水産試験場)・渡辺勝敏(京都大学大学院)・渡邊精一(東京海洋大学)

滑川町におけるミヤコタナゴの保護
松本由紀夫(滑川町教育委員会)

佐鳴湖西岸のアブラボテ
小杉正則(浜松水辺を愛する会)

京都府亀岡盆地におけるアユモドキの産卵場所の現状と保全活動の展開
紀平大二郎(中間法人水生生物保全研究会)仲田丞治(NPO法人亀岡人と自然のネットワーク)岩田明久(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

大阪府下の溜池に生息する絶滅危惧種ニッポンバラタナゴの繁殖生態と生活史
北村淳一(京大・理・動物)

ミナミアカヒレタビラの生活史と繁殖生態、保全の取り組み
鴛海智佳(ミナミアカヒレタビラ研究会)・北村淳一(ミナミアカヒレタビラ研究会、京大院理動物)・星川和夫(ミナミアカヒレタビラ研究会、島根大院)

三重県櫛田川水系産のシロヒレタビラの産卵母貝種選択とその要因
前田 玄(大阪教育大・院)・北村淳一(京都大)・川畑綾子・長田芳和(大阪教育大)

福島県に生息する淡水二枚貝類と問題点
稲葉修(南相馬市博物館・阿武隈淡水動物研究会)・倉石信(ふくしま海洋科学)

東京都葛西臨海水族園における淡水生物の展示と新たな教育プログラム「リバーウォーク」について
松山 俊樹(葛西臨海水族園 飼育展示課 教育普及係)金原 功(葛西臨海水族園 飼育展示課 飼育展示係)

霞ヶ浦の活動紹介〜里浜魚類調査1日漁師
菊地 敏夫(社)霞ヶ浦市民協会

ローカル図鑑が果たす役割
「平成調査 新・霞ヶ浦の魚たち」の場合
執筆グループ 鹿熊勉(かくまつとむ)

琵琶湖におけるイチモンジタナゴ復元にむけての取り組み
武田 繁・遠藤真樹・星野隆護(ぼてじゃこトラスト)・北島淳也・山野ひとみ・鈴木規慈(滋賀タナゴサミット)

ヤリタナゴTanakia Lanceolataの繁殖生態
田上佳子(東海タナゴ研究会)・北島淳也(岐阜大)・森誠一(岐阜経済大)

滋賀県におけるイチモンジタナゴの保全活動
西田翔太郎 北島淳也 田上佳子 笠井譲 金尾滋史(滋賀タナゴネット)
 

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パネルディスカッション


テーマ:「タナゴを通して地域の希少生物との共存を考える」
コーディネーター:小林 光(NPO法人 日本国際湿地保全連合)
パネリスト:加納義彦(タナゴ集会 代表)
      山崎晃司(茨城県立自然博物館)
      勝呂尚之(神奈川県水産技術センター内水面試験場)
      萩原富司(霞ヶ浦市民協会)
 
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茨城県立自然博物館の山崎氏よりツキノワグマの被害が増えていることについて言及。野生動物のと共生は人間に危害が及ぼすとニュースになるが及ぼさないと関心が持たれない。特に淡水生物は、声を上げないので知らない内に姿を消してしまう難しさがある。

中央官庁の淡水生物に対する意識も変わってきている。が地元の住民や市町村職員の意識も変わっていかないと淡水生物は生き残れない。

声を上げない淡水生物に代わって萩原氏が、情報を発信していきたいと語った。

最後に市民グループ同士の情報の共有、ネットワーク作りが必要と締めくくられた。
 
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