水郷・潮来の美しい景観を代表する前川は、潮来市街から延方と大洲の間を通り、鹿島に向けて鰐川へとつながり末広がりに広がっていきます。末広がりの鰐川は大船津の湖岸、そしてその背後の鹿島神宮を向いています。この川は鹿島神宮と対峙する位置にあることから、前川と呼ばれるようになりました。交通手段が車に替わるまでの長い間、鹿島詣には舟が使われ、前川を鹿島へ進む水上ルートが存在していました。前川を進むと、大船津の岸近くの湖上に立つ鹿島神宮一の鳥居が参詣客を出迎えたと言います。鰐川の末広がりの先に位置する大船津は鹿島神宮の表玄関だったわけです。鹿島神宮・香取神宮・息栖神社は水郷三社として知られています。これら三社は、十六島が形成される以前の流海の広い流域の角地に離れて位置していますが、中心的な社であった鹿島神宮は前川〜鰐川という水域の存在によって、さらにその神格性・求心性を強めていたように思われます。
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