神は自然の力の抽象化された姿であると言っていいでしょう。またそのために人の信仰と関わってきました。鹿島神宮は、鹿島台地の上、標高38メートルの高さにあります。霞ヶ浦*周辺を取り巻く常総台地(新治台地、行方台地、鹿島台地、…)は、この地域特有の特徴を成しています。鹿島台地は40メートル近い小高い台地が利根川河口域に向けて突き出るようにそそり立っています。上の映像を御覧いただければ、鹿島神宮の存在が一目瞭然ではないでしょうか。国の重要文化財に指定された見事な鹿島神宮の森は現在もなお保全され、その周囲に鹿嶋市の町が広がっています。鹿島神宮の森には、この土地特有の谷津が入り込み、北浦と面しています。北浦に架かる橋は神宮橋(下)とJR鹿島線の鉄橋(上)です。古来はもっと水域が鹿島の森に迫り、人々は舟を手段として鹿島神宮に詣でていた状況を想像してみることができます。 近世の絵図には、水と鹿島神宮の森のイメージが描かれています。このような地形になるには何度も変化があったことが知られています。霞ヶ浦*周辺の台地が概ね20〜30メートル台であるのに対し、鹿島の台地は基盤岩層が隆起し、40メートル前後と、他の台地よりも一段高く、これも鹿島の神話イメージの形成に関わっていることが推察されます。火と水の神話は、隆起した台地と水(霞ヶ浦*、太平洋)に囲まれた鹿島にいかにもふさわしく、そうした地形を出現させた自然現象の力が武甕槌神という神によって表現されているというのは、一つの納得できる説明です。こうした鹿島の土地を実感してみようというのが、この企画の狙いの一つです。
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