1956年に現在のかすみがうら市(旧霞ヶ浦町)を主なロケ地として撮影された映画『米』(1957年、今井正監督)は、霞ヶ浦の自然環境を背景に、半農半漁の貧しい暮らしを描いた社会派ドラマでした。また、数多くの映画賞で、作品賞、ベストワンに選ばれた名作でした。映画史的に重要な作品の一つというだけでなく、かつての霞ヶ浦周辺の風土と生活を記録した作品としても貴重な作品となっています。ドラマが当時の農漁村の社会状況や生活を再現していると同時に、記録された映像は現在では失われた貴重な文化、風土の記録ともなっています。俳優が語るこの地の方言に地元出身者としては違和感を感じましたが、この映画は「…だっぺえ」という言葉の美しさを今に伝えてくれています。また、この映画には、かすみがうら市(旧霞ヶ浦町)各地の風習や風物が登場します。これもかけがえのない記録です。確かに、子供の頃までは、映画に捉えられた美しい情緒が残っていました。今では、すっかりその面影がなくなってしまいましたが…。
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