鹿島アントラーズの誕生と県立カシマサッカースタジアムの設立は、広大な農村地帯である霞ヶ浦・北浦エリアに、新しい地域文化をもたらしたという点で革命的な出来事ではなかったかと思います。地元・鹿嶋市は、現在ではすっかりサッカーの都市として活性化してしまいました。鹿嶋市だけでなく、茨城一円の人々の心も掴んでしまいました。Jリーグ人気の下降現象が指摘されていますが、鹿島に限っては、そうした問題は、全くの杞憂のようです。行方郡に入ると、行方市(旧玉造町)のような、鹿嶋市から遠い地域にもカシマサッカースタジアムの道案内が立っていたりして驚かされます。ここで面白いことは、湖に物理的に隔てられていたこの地域の人々が、地元のサッカーチームという共通のアイデンティティを持ち、支持しているということです。アントラーズ支持エリアは、茨城県、とりわけ霞ヶ浦・北浦・太平洋エリア、さらに千葉県の水郷地帯一円に及んでいます。私は、『マッピング霞ヶ浦*』で、霞ヶ浦周辺地域の古くて新しいネットワーク(相互的なつながり)を検証してみようとしているわけですが、アントラーズほどに、求心力を得たものはかつてなかったのではないかとすら思います。『マッピング霞ヶ浦*』で扱っている地域とアントラーズ支持エリアは面白いほどに重なり合っています。歴史的に誰もがなしえなかったことをアントラーズが可能にしてしまったということは、驚くべきことです。このことは、この地域理解に大きな示唆を与えてくれます。
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