まるで神話の世界に入り込んだような錯覚にとらわれるかのような幻想的な岩山の風景でした。ワーグナーの『ワルキューレ』の岩山の情景を見ているかのようです。生き別れになった兄妹、ジームクントとジークリンデが素性を知らずに出会い、愛し合って人間界の英雄ジークフリートが生まれたわけですが、この龍神山にもこれと非常によく似た伝説、努賀比古（ぬかびこ）と努賀比売（ぬかびめ）の物語があります。岩山には、龍神やジークフリートのような伝説を生み出す神話化作用があるのかもしれません。ところで、1999年の夏はお盆までの長い間、雨が降らなかったと言います。龍神山を訪れたこの日は断続的な豪雨となり、龍神の山も雨で潤いました。この時間帯にはまだ小雨が降っており、靄が白く山肌にかかっていました。雨乞いの神、龍神にふさわしい龍神山の記録となりました。
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